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わたしはJ-POPの歌詞分析をしているthe 8 riseといいます。分析を通して、J-POPに共通する特徴をまとめ、作詞に使えるテクニックにしたいと思います。最初の本を書くためのアイデアをブログで公開していきます。 興味がある方は随時更新をお知らせしますので、ブログの購読者にご登録お願いします。
椎名林檎さんの歌詞の特徴には、以下のような条件で繰り返し現れる子音があります(ぼくは子音ピボットと呼んでいます)。
- 子音を固定し母音を変化させていく
- 歌詞の1-2行以内といった短いスパンで現れる
この特徴を知ることで、わたしたちは椎名林檎さんの歌詞をよりよく知ることができますし、自分で分析してあなたの作詞に役立てることができます。
この記事では「子音ピボット」という分析のアイディアをご紹介しようと思います。
子音ピボットのやり方
まず子音ピボットのやり方から説明します。「ピボット」とは「軸そのもの」や「何かを軸にして体を回転させるようす」を指すことばです。身近な用例ではバスケットボール用語として知られていますね。
上の図のように、「か行」の子音を軸とし、母音を変化させると「かきくけこ」の音が得られますが、歌詞中でこれを短いスパンで散りばめていきます。これが子音ピボットです。
上の図は「か行子音」を用いた子音ピボットの作詞例です。歌詞はわたしがかんがえました。
実例
では、椎名林檎さんの「歌舞伎町の女王」で実例を見てみましょう。
Aメロで「か行子音」のピボットに注目してみると、次の図のように図式化できます。
同様に、Aメロの始めのパートを分析すると、短時間で子音ピボットのモードに変化が起きていることがわかります。
このように、ある短いスパンで子音を固定し、母音を変化させる子音ピボットのテクニックを用いることで歌詞の音声的な印象を安定させ、同時にそれにもとづいてわかりやすく変化させていくことができます。
補足
子音が繰り返し出てくるやり方は、椎名林檎のみならずJ-POPやHipHop/Rapでもよく見られると思います。しかし椎名林檎の例を取り立てて「子音ピボット」と呼ぶ理由は、以下の特性によります。
- 必ずしも決まったタイミングで現れるわけではない
- 子音が固定しているものの、母音は変化する点で、「反復」より「変化」の志向が強い
たとえばヒップホップで有名な「脚韻」あるいは「ライム」のテクニックは、一般的に、フレーズの終わりなど定位置で反復的に出てくることを志向しているでしょう。また同様に「ライム」のテクニックは、できるだけ同じ子音・同じ母音を用いようとするため、リスナーにわかりやすく反復を行うためのテクニックです。
一方、「子音ピボット」はどちらかといえばリスナーにとってわかりにくいテクニックです。
リスナーにはっきりとは気付かせないが、歌詞にリズムと音楽的な安定感をもたらす方法だと考えていただいてもいいでしょう。
子音ピボットの分析を実際にした動画もあるので見てください。
以上のように、分析を通してJ-POPに共通する特徴をまとめ、作詞に使えるテクニックについて本を書いています。本のアイデアをブログで公開していきます。 興味がある方は随時更新をお知らせしますので、ブログの購読者にご登録お願いします。
課題
意欲の高い方は、子音ピボットのテクニックを使って、椎名林檎さんの「ありきたりな女」またはスピッツの「空も飛べるはず」を分析してみてください。
また、「ありきたりな女」もしくは「空も飛べるはず」の分析をぜひ読みたいという方がいらっしゃったらコメントをお書きいただくか、筆者のTwitterにリプライいただければ今後の執筆に反映していきたいと思います。ご質問等もお待ちしております。興味がある方は随時更新をお知らせしますので、ブログの購読者にご登録お願いします。