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前回の投稿「宇多田ヒカルの作詞の特徴:半シラブル化仮説」では、仮説と概論を示しました。
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今回の投稿では、前回述べた「宇多田ヒカルの歌詞には切れ目がある」という話を具体的に説明していきます。
概要を先に示しておくと、特に小節の1拍目と3拍目において子音を強調して発音することで切れ目が達成されており、実際にそれをやる方法について書きます。また、特にそのテクニックに使いやすいおすすめの子音を提示します。歌うときや歌詞を書くときにぜひ試してみてください。
あくまでもぼくの狙いはミュージシャンが理解して、実作や実演に使える分析方法を提供することにあります。ご意見やご感想がありましたら、メール(info⭐︎lyricstheory.com 星をアットマークにしてください)もしくはTwitter( @lyricstheory )までご連絡ください。
ヒツジとハサミのイラストは DJ REAL に描いていただきました(まだTwitterはやってないみたいです)。かわいいですね。ありがとうございます。
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宇多田ヒカルのように書くための原則
“Automatic” の有名な歌い出し「な・なかいめの/べ・るで」にも表れているように、宇多田ヒカルの作詞とボーカルスタイルの特徴は不自然な切れ目があることです。この「切れ目」を再現する方法が今回の主題です。
与えられたメロディに対してどういう歌詞をつけていくか。そしてその歌詞はどう歌われるべきか。そのことについて書いていきます。
切れ目をどこに作るか:1拍目と3拍目に作る
他の場所でももちろん起こっている現象ですが、特に1拍目と3拍目に注目すると、「切れ目」があることを確認しやすいと思います。まず音源を聴きながら図を見てください。
勘のいい方なら、「1拍目と3拍目」だけではなく、半拍早めに出るシンコペーションの際にもこの切れ目が生じていることに気づくかもしれません。ですが、それは今回の本筋ではないので、省いて、今後書くべき課題とします。
ここでは、読者のみなさんは特定の位置で反復的に「切れ目」が現れることを理解してください。
日本語の文節と宇多田カットのズレ
宇多田ヒカルの歌詞とボーカルが不自然な切れ目を持っているように聴こえる理由は、日本語の文節が持っている切れ目とは別のところに歌の切れ目を作り出しているからです(図中で「・」が打たれている位置)。このテクニックを「宇多田カット」と呼ぶことにします。
(ダサいネーミングですか? いいアイディアがあれば、ぜひ @lyrisctheory までぜひ教えてください!)
ちなみに「日本語の文節」とは「意味の切れ目」というぐらいの意味です。「単語と単語の切れ目」よりは少し広い範囲を持っています。
「宇多田カット」はひとつながりの意味まとまりを持つフレーズに対して、発音を意図的にカットしていくことによって作られています。
ではどうやってそれをパクっていけばいいでしょうか。
ポイントは2つあります。どこに作るか、そしてどう発音させるかです。
言い換えると、歌詞の書き方と歌い方のテクニックの両方を学ぶ必要があります。
切れ目を作る4つの手法
切れ目を作る手法には4つあり、今回はそのうち2つをご紹介します。
(残りの手法については今後書く予定です。)
1の「ば行/だ行/た行/ら行」の子音以外にも、 “Automatic” では使われていますが、宇多田ヒカルの他の楽曲を聴いてこれがかっこよくて使いやすいだろうと思ったおすすめの子音をセレクトしました。
実際に日本語の文節を不自然に区切る1拍目、3拍目で使ってみてください。これを習得するための実践的な課題についても、今後書く予定です。
切れ目を作るための発音
切れ目を作ることができる子音を選んだあとに、実際にそれをどう発音するか?も重要な問題です。
発音のポイントは以下の5つですが、今回の投稿では、このうち1、2、3についてだけ述べます。
もしかしたら英語の発音の方法に近いのかもしれませんが、メロディが持っているリズムに対して、母音がジャストで出るように発音する必要があります。
そのためには、次の発音の直前で子音を準備する必要があります。
たとえば「ば行」の子音の場合、唇を閉じて「B」子音のかたちにしておいて、それからリズム的にジャストのタイミングで「ば」と発音します。
なおかつ、強めに発音する必要があります。
宇多田ヒカルの「切れ目」はこの子音の準備の瞬間に生まれる音の切れ目なのだと考えられます。
つまり子音を強調すること、母音をジャストに乗せることで、宇多田ヒカル的な歌の印象が生まれているのでしょう。
それでは具体的な例を以下に列挙します。
「ば行/だ行/た行/ら行」子音の強調方法
「ん」音の挿入
さらに「な行/ま行」子音の前に「ん」音を挿入することで、母音の発音がジャストでリズムに乗る感じに発音できます。
見方によっては、先の例と同じように「な行」のN子音、「ま行」のM子音を準備しているという言い方もできます。
しかしテクニック的には「ん」音を挿入して歌うと理解したほうが使いやすいと思います。
今回の投稿はここまで。
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