宇多田ヒカルの作詞の特徴:半シラブル化仮説


今回は宇多田ヒカルの作詞を実践的にパクる方法を考えています。

宇多田ヒカルの歌詞の特徴には、自由なライムや反復、ユニークなボキャブラリーなどがありますが、今回は取り上げません。

メロディーに対するリズムの処理の特性、 “Automatic” や “First Love” に見られる不自然な切れ目に着目し、「半シラブル化」が行われているという仮説を組み立てて検証します。

以下では専門用語を使って議論しますので、概要を簡単に書いておきます。

ASIAN KUNG-FU GENERATION 的な歌においては、言葉のリズムを変えることで英語的な印象を獲得している。

一方、宇多田ヒカルの歌においては、リズムは同じまま歌い方を変えることで、歌に切れ目を生じさせて英語的な印象を獲得している。

 

1.3 半シラブル化の結果

この研究の狙いは、あくまでも「宇多田ヒカル的な歌詞を書く」ための汎用的な方法を発見するのが目的です。

「シラブル」および「モーラ」はいずれも本論において重要な概念ですが、今回の投稿では説明を省略します。
さしあたってすぐに知りたい方はググってください(本サイトでそのうち作詞に必要な概念のグロッサリーを整備する予定です)。

この投稿では、まず結論を述べ、後日分析と検証を行い公開していく予定です

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「半シラブル化」の定義

本仮説における「半シラブル化」とは、前回の ASIAN KUNG-FU GENERATION 論で紹介した、日本語ロック的な分節(=切れ目)とは異なるやり方で、宇多田ヒカルが「シラブル化」を行っている様子を指摘するものです。

具体的なテクニックとしては、以下の3点が特徴です。

  1. 単純な母音の発音を強調し、その前のモーラとその後ろのモーラを分節する
  2. 特定の子音の直前で自然に発生する発音の切れ目を強調し、その前のモーラとその後ろのモーラを分節する
  3. 「な行」「ま行」の直前に撥音「ん」を挿入することで、その前のモーラとその後ろのモーラを分節する

(単に作詞の特徴だけではなく、宇多田ヒカルのボーカルスタイルの特徴も含まれています。 ASIAN KUNG-FU GENERATION 論でも扱いましたが、どのように歌うかという問題と、どのように詞を書くかの問題は、ふつう切り離すことができません。)

まず、日本語のモーラ的な表現は、時間的に等拍である発音の連続によって特徴づけられます。

この発音の特性を「無声化」「二重母音化」や撥音「ん」の短縮によって「閉音節化」することで、モーラ性を弱めてシラブル的に聴かせるというテクニックこそが、 ASIAN KUNG-FU GENERATION に代表される日本語ロックで普及している傾向です(前回述べた ASIAN KUNG-FU GENERATION 風に書ける6カ条のうちの5つによって実現されます)。

ここでいう「モーラ性を弱める」とは、2モーラである「あい」「おう」のような音声の等拍性を壊して、「あーーーい」「おーーーーう」のようにスウィングさせて不等拍な音声に変化させることです。この処理によって、シラブル的に聴かせることができるようになります。

 

1.1 ASIAN KUNG-FU GENERATION 的なシラブル化ところが、宇多田ヒカルの作詞および歌唱のスタイルにおいては、この時間的に等拍なモーラ性を極端に弱めることなく、むしろ日本語の音に内在する切れ目を強調することによって、モーラ性を保ったまま、シラブル的に聴かせるという戦略を取っています。これを暫定的に「半シラブル化」と呼んでいます。

分節に利用できる音と方法の列挙( “Automatic” の場合)

実際問題として、これをソングライティングに活かす場合どうしたらいいか。それが本論の目的です。

これを達成するために、今後の投稿では代表曲である “Automatic” ではどうなっているのかを実例を挙げて、さらに課題に変換していきます。いまわかっている事実を示しておきます。

1.2 半シラブル化の手法

これらの操作によって、モーラ的な連続した音の塊は分断され、日本語が本来もっているのとは異なる短い単位に区切られていきます。これを「半シラブル化」と呼ぶことにします。

1.3 半シラブル化の結果

次の投稿では実際にどうなっているかを検証していきます。

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コメント (4)

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